「踏ん縛れ!」
朽木勘三郎の叫びと同時に、黒い塊が夜道を突進した。
岡っ引きの伸六に気付いても、勢いがついた賊は避ける事ができない。あわや激突するかというところを、間一髪、身を反らすと足払いを掛け、伸六は転倒した相手に馬乗りになった、同時に懐から細引きを出して腕をめまぐるしく動かしたかと思うと、雁字搦めに縛り上げていた。
まさに電光石火の早業であった。
立ち待ちの月が中天にかかってはいても、十分な明るさとはいえない。咄嗟にそれだけのことができたのは。伸六の天性の敏捷さのゆえだろう。
ー野口卓「闇の黒猫」(北町奉行朽木組1)から抜粋ー
「挿絵」の練習です。
MJの課題「挿絵」にちょうど読んでいたこの本を選びました。
この絵は、この小説の出だしの部分です。
「立ち待ちの月」って知らなかったし素敵な言葉なので調べたところ、日没後、立って待っているうちに月が昇ることからそう呼ばれている月のことだそうです。
実際の立ち待ち月は十七夜の月で、満月が幾分欠けた月なのですが絵的にしっくり来る感じの十三夜を描いています。
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