「遠慮せずに入れ」
菊四郎に催促されて、由乃は身体をすくめるようにして傘の中に入ってきた。なまぐさい魚の香がした。雪が降りしきる中で、それは鋭く匂ったようだった。
「何を買ったな?」
「鰯です」
由乃は小さい声で答えた。由乃はどこか自分を恥じているようにみえた。傘もささず粗末な身なりで、町女のように魚を買いもとめている姿を菊四郎に見られたのを恥じているようだった。
(藤沢周平「雪明かり」より抜粋)
三十五石の貧しい実家から二百八十石の家に養子に出た菊四郎と、実家の父の後妻の連れ子、由乃。
境遇が違ってしまった義理の兄妹が、それぞれの不幸な結婚から紆余曲折を経て将来に希望をつなげる話です。
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sace (月曜日, 05 12月 2011 00:22)
構図がとてもイイですねー。
背景もスッキリしてますし。
Katoさんの時代物とレトロものの顔の描き方違うな〜とトップの子どもの絵と見比べちゃいました…スミマセン。
kato (月曜日, 05 12月 2011 22:05)
コメント、ありがとう!
描き込まないようシンプルに仕上げるよう気を付けました。
時代物の顔はキリッとさせすぎちゃうのでしょうか。
顔がワンパターンになっちゃってるね。
写真を見て、もっと人物の顔のバリエーションを増やす研究をしないといけないなー